研究概要 |
ピルボイルプテリンの合成として、まずヘテロ環に結合している2位水酸基および4位アミノ基を側鎖に結合している二つの水酸基と化学的に区別し、後者だけを酸化してジケトンとする方法から着手した。はじめに4位にブトキシ基を導入したビオプテリンの合成を行った。この化合物は、4ーブトキシピリミドンと光学活性4ーヒドロキシー2,3ーエポキシペンタナ-ルとの反応により効率よく合成できることを見いだした。この結果は、天然型ビオプテリンの化学合成法として論文に報告した。得られた化合物は、アルコ-ル類には可溶だが側鎖のアルコ-ル性水酸基をケトンに酸化するときに用いる極性の低い有機溶媒には溶けにくかった。合成の出発物質としてこのような性質を有するビオプテリン誘導体を合成するために、4位と2位アミノ基をさまざまな基で保護することを検討中である。 キノノイドジヒドロビオプテリンは、化学的に不安定な化合物で数分間の半減期で分解することが解っている。生体内に近い条件では、ケト-エノ-ル互変異性によりすべて7,8ージヒドロビオプテリンへ異性化する。この異性化反応は、キノノイドジヒドロビオプテリンに対して求核剤を働かせて4aーヒドロペルオキシドを合成する方法の成否を握っている。反応機構を詳細に検討した結果、この反応はジヒドロプテリン類には共通に起こり、生体内でビオプテリンやネオプテリンからそれらのジアステレオマ-が生成する過程の鍵反応でもあることを明かにした。このようにして生合成されたと見なされる新化合物ウマノプテリンをガン患者の試料から単離し構造を決定した。これらの結果についても論文として報告した。
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