研究概要 |
α,αージ置換グリシンのなかでも特に嵩高いα,αージイソプロピルグリシン(Dip)およびα,αージフェニルグリシン(Dph)を含むペプチドの合成について、超高圧および常圧の条件下での検討を行なった。今年度の主な成果は次の通りである。 1.ジイソプロピルケトンとベンジルアミンとシッフ塩基とVal、Leu、Ala、Glyなど数種のZーアミノ酸およびイソシアノ酢酸メチルを9kbarの超高圧下で縮合させ、Dip残基を含む数種のトリペプチドの合成に成功した。種々の条件検討の結果、高濃度での反応により超高圧下と比較してやや劣るものの常圧下でも中程度の収率で目的物が得られ、Dip含有ペプチドを簡便に得ることができることが明らかになった。 2.上記Dip含有トリペプチドからのNーベンジル基の除去を接触水素化分解により行なったが、目的物が得られず予想外の双環性アシルアミジンが中程度の収率で得られた。このヘテロ環系の生成は興味深いものであり、Nーベンジル基の除去の問題と共に今後さらに検討したい。 3.DipのN端およびC端の反応性を検討したが、超高圧下でもほとんどの場合目的物は得られず、わずかに9kbarでHCl/MeOHを作用させた場合にDip-OMe・HClが10%の収率で得られたに過ぎなく、非常に反応性が低いことが明らかになった。 4.蟻酸、上記塩基、およびイソシアノ酢酸メチルの縮合生成物からの水素化分解で初めてDip含有ジペプチド(HCO-Dip-Gly-OMe)が得られた。 5.昨年度得られたDph含有トリペプチドのうち6種についてX線結晶構造解析ができた。その結果、そのうち3種は従来の説とは異なりβ-ターンをとっていることが判明した。 6.シクロヘキサノンオキシムを用いるUgi反応によりNーヒドロキシトリペプチドを合成でき、それをケン化および縮合によりNーヒドロキシテトラペプチドに導くことが出来た。
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