1.分離:三重県志摩半島沿岸にてアメフラシ約300Kgを採集し、数段階の抽出分離操作を経て立体構造解明に必要な約70mgのアプリロニンを分離した。また同時に、7種のアプリロニン類層縁体を極微量成分(各々数mg)として分離した。 なお、細胞毒性物質ネオハリメダラクトンに関しては、必要量のサンプルの分離に至っていない。 2.立体構造の解明:上記により得られたアプリロニンを9段階の反応により5個のフラグメントに切断した。これらフラグメントのスペクトル解析により、アプリロニンの平面構造を確定することができた。次いで、2個のフラグメント(アプリロニンの59個の炭素原子のうち14個を持ったフラグメントと18個を持ったフラグメント)のエナンチオ選択的合成を達成することにより、アプリロニンの17箇所の不済中心のうち13箇所の絶対立体化学を決定できた。現在、アプリロニンの全絶対立体化学の解明に向けて、残る3個のフラグメントのエナンチオ選択的合成を進めている。ホスフォリパ-ゼA_2活性化作用物質アプリジラクトンに関しては、化学反応により2個のフラグメント(不済中心を3個持つ化合物と9個持つ化合物)に切断し、それぞれのスペクトル解析を行うことにより一部の立体化学が明らかにした。 3.アプリロニンの化学合成:アプリロニンの立体化学に関する上記の結果に基づき、アプリロニンの全合成を開始した。アプリロニンは分子内の3箇所に異なる立体化学の四連続不斉中心を有しているが、これまでにこれらの四連続不斉中心を一組づつ含む3個のフラグメントのエナンチオ選択的合的を達成した。 4.構造活性相関:上記項目1で述ベたアプリロニンの7種の類縁体について、スペクトルデ-タに基づきその構造を明らかにした。これら類縁体の細胞毒性を検定した結果、アプリロニンの構造上の特微であるアミノ酸エステルの存在が生理活性の発現に極めて重要な因子であることが判明した。
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