研究概要 |
1.コチレノ-ル型の立体化学を有する三環性テルペノイドはプラギオスピロリドの部分構造としても存在しているが、そのジテルペン部分、フシコカー2,5ージエンの全合成に成功した。その合成過程において、低原子価チタンによるジア-ルの還元カップリングを8員環形成に利用したが、この反応は、本研究課題の鍵反応であり、ここで得られた知見は、極めて有用であった。 2.この種の三環性テルペノイドを前駆体とするテルペノイド配糖体としてソルダリンが知られている。その四環性ジテルペン部ソルダリシンの基本骨格を、生合成経路においても想定される分子内DielsーAlder反応により構築することに成功した。我々が先に提出していた生合成仮説を裏づける重要な成果である。 3.本研究課題の成否を左右する8員環形成時の立体化学を分子力場計算により見積ることを試みた。低原子価チタンによる還元環化の遷移状態を生成物のアセトニドをモデルとして計算した結果、これまでに得られている実験事実をよく説明できることが判明した。したがって、逆に想定した環化前駆体からの生成物分布を計算により前もって予測することが可能となったわけである。この手法を用い、コチレノ-ル型の立体化学を与えると予測される前駆体を見出すことに成功した。今後、実際にその環形成反応を行い、コチレノ-ルの全合成に結び付けるべく検討を行う予定である。 4.3年度に備品として娯入した低温恒温槽付磁気撹拌器は還元環化反応の制御に、中圧カラム用ポンプは生成物分離に有効に使用している。
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