平成3年度における研究結果は、以下のように要約される。 1)超微量元素分析に際し最も問題となるのは、分析過程で入り込む汚染量の低減とコントロ-ルである。平成3年度は、Cu、Pb、Zn、Ni、Cdの各元素について、純水、試薬、分析器具について夫々ブランク値を測定した。その結果、従来室蘭工業大学において開発されたサブボイリング法による、純水製造と試薬の精製により極限までブランク値が低減された、純水並びに試薬中のCu、Pb、Zn、Ni、Cdのブランク値はほとんど従来の値と大きく異ならない事が確かめられた。この事より純水や試薬のブランク値の一層の低減は余り期待出来ず、むしろ器具類の洗浄法の改良や分析操作での汚染コントロ-ル法の開発が重要であることが分かった。 2)Feは多量に我々の環境中に存在するため、高純度物循中のFeの精度の高い定量は極めて因難であり、ブランクの低減と高精度超微量測定法の開発が必要である。平成3年度は、超微量元素の絶対分析法である同位位希釈表面電離循量分析法によるFe定量法の開発を進め、大きな成果が得られた。既ち、シリカゲル-燐酸を安定化剤とし、レニウムフィラメントでイオンすることにより、絶対量として10ngのFeが、1%以下の精度で測定可能であることが解認された。この同位体希釈表面電離循量分析によるFeの分析法は、世界的にも殆ど末開発であり、高純度物循のみならず、様々な物循の超微量Feの高精度分析に利用出来るものと考えられる。
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