研究概要 |
8ーキノリノ-ルの5位に炭素数の異なる種々のアルキル基(-0-CnH_<2nt1>,n=1〜8)を有する8ーキノリノ-ル誘導体(HOnQ)を合成し,クロロホルムー水間及びヘプタン,水間の分配定数を決定した。いずれの溶媒でも,炭素鎖の炭素数が増すにつれて分配定数が約0.6ほど増大し,疎水性が大きくなるが,酸解離定数には炭素鎖はほとんど影響しないことが明らかとなった。疎水性の大きな5ーオクチルオキシメチルー8ーキノリノ-ル(HO_8Q)及び2ーメチルー5ーオクチルオキシメチルー8ーキノリノ-ル(HMO_8Q)による弱酸性溶液からのガリウム(III)のヘプタンへの抽出挙動および抽出鎖体の組合を平衡論的及び速度について検討した結果,HO_8Qでは,共存する陰イオン(Cl^-,ClO^ー_4)に関係なくGa(O_8Q)_3として抽出され,抽出定数としてlog=Kex=3.4が得られた。ところが,HMO_8Qでは,ClO^ー_4が存在する場合にはGa(OH)(MO_6Q)_2として抽出され(logKex=-4.2)るが,Cl^-が存在する場合にはGa(Cl)(MO_8Q)_2として抽出(logKex=1.3)される。このようにHO_8QとHMO_8Qとでは抽出される鎖体の組成が異なるのは,ガリウム(III)のイオン半径が比較的小さいため,HMO_8Qの場合にメチル基同志の立体障害により3分子配位できないためと推察される。ガリウム(III)のHO_8Qによる抽出速度は溶媒によって異なり,クロロホルムよりヘプタンの方が著しく大きいことがわかった。モリブデン(VI)はHO_8Q及びHM_8Qにより強酸性溶液及び弱アルカリ性溶液からクロロホルムにM_0O_2(O_8Q)_2及びM_0O_2(MO_8Q)_2として抽出され,他の金属からの選択的分離が可能であることも明らかにした。M_0O_2(O_8Q)よりもM_0O_2(MO_8)_2はアンモニア水で逆抽出されやすく,逆抽出のされやすさにHMO_8Qのメチル基の立体害が関係しているものと推察、詳細は検討中である。
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