研究概要 |
1.Ga(III)は5-オクチルオキシメチル-8-キノリノール(HO_8Q)によりCl^-の存否に無関係に弱酸性溶液からヘプタンにGa(0_8Q)_3として抽出(抽出定数K_<ex>=10^<3.2>)。一方、2-メチル-5-オクチルオキシメチル-8-キノリノール(HMO_8Q)ではCl^-存在下でGa(OH)(MO_8Q)_2(K_<ex>=10^<-4.2>)として、Cl^-存在下ではGa(Cl)(MO_8Q)_2として抽出される。HMO_8Qによる抽出では、1,5‐ジクロロフェノールのような疎水性の陰イオンが存在すると抽出率が増大する。 2.Ga(III)のHO_8Qによる弱酸性溶液からのヘプタンへの抽出の律速段階は水相中でのHO_8QとGa^<3+>およびGa(OH)^<2+>との競争反応と考えられる。抽出速度は溶媒によって著しく異なり、ヘプタン>クロロホルムとなる。 3.MO(VI)はHO_8QおよびHMO_8Qにより、抽出される錯体はいずれも1:2のMoO_2(O_8Q)_2(K_<ex>=10^<17.7>)、MoO_2(MO_8Q)_2(K_<ex>=10^<14.9>)である。MoO_2(O_8Q)_2は0.3Mアンモニア水で逆抽出され易いがMoO_2(O_8Q)_2はされにくい。Mo(VI)はMo(V)(Mo_2O_4^<2+>)より強酸性溶液から抽出され、Mo(V)とMo(VI)の分離が可能である。 4.Pd(II)は塩酸酸性溶液から、HMO_8QによりPd(MO_8Q)_2(K_<ex>=10^<14.7>)として抽出され、抽出速度はクロロホルムよりヘプタンの方が大きい。抽出錯体はpH3で0.3M SCN^-により逆抽出される。抽出速度、逆抽出等を巧みに利用し、Pd(II)を他の金属イオンから選択的に分離できる。 5.Kelex100に4‐ニトロフェニルアゾ基を導入した5-(4-ニトロフェニルアゾ)-7-(4-エチル-1-メチルオクチル)-8-キノリノールによるZn(II)の自己付加錯体生成を種々の溶媒を用いて検討するとともに、Zn(II)のCd(II)からの分離の可能性を明らかにした。 以上の成果をもとに、金属イオンの環境分析への応用が期待される。
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