研究概要 |
前年度に導入した高速掃引微分パルスボルタンメトリー(FSDPV)装置を用いて,各種マイクロ電極での容量性電流の時間応答特性を詳細に測定,解析し,本測定システム並ぴにマイクロ電極セル系の評価を行った.その結果,代表者が開発した内部シールド型マイクロ電極(SME)は,溶液抵抗の大きい溶媒中でも非常に優れた応答性能を示し,また,容量性電流の絶対量が著しく低滅し,さらに,10マイクロ秒以内にほぼ減衰することを確認した.なお,このFSDPV装置をクロノアンペロメトリー,DC,サンプルドDC,ノルマルパルス及び微分パルスボルタンメトリーの各モードでの高速測定ができる上に,これらにストリッピング法の併用が可能な多機能高速電子化学測定システムとして完成されるために,ソフトウェアーの開発を行った. 次に,本装置と各種半径のSMEを用いて,パルス電解時間やパルス待ち時間を変化させた場合の微分パルスボルタモグラムについて,詳細な基礎検討を行い,理論式による計算やデジタルシミュレーション結果と比較考察した。その結果,50μm径のマイクロ電極では20μ秒のパルス電解時間並びにパルス待ち時間で測定が可能であり,時間分解測定法として有効であることがわかった.また,フェロセンのような可逆系で得られる酸化還元ピーク電位差は,印加パルス電圧に等しくなり,理論的予測と一致した。結論として,FSDPVは標準酸化元還電位の高精度測定法として有効であることを実証した.なお,FSDPV法の時間分解検出法としての応用については,本法がミリ秒領域での時間分解能を有していることは実証されたが,データ記憶用に使用している市販デジタイザーはボルタモグラムを1本しか記憶できないので,現在,512本のボルタモグラムを記憶できるデジタイザーを開発中であり,今後,時間分解検出器としての応用面を発展させていきたいと考える.
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