研究概要 |
クラウンエーテルを配位させるとモノフェニルタリウム化合物が安定化するということが明らかになったので、この錯体を用いて二三の反応を行なった。まずフェノール類と反応させた結果、夕リウムイオンはフェノールのヒドロキシ基と反応するのではなく、比較的温和な条件下で選択的にヒドロキシ基のパラ位で求電子置換反応を起こすという興味ある結果を得た。比較実験としてクラウンエーテルがないモノフェニルタリウムとフェノ一ルとの反応では、再分配反応によると思われるジフェニルタリウムのみが得られた。パラ位に置換基を持つパラクレゾールとモノフェニルタリウムクラウンエーテルとの反応は全く進まず、この反応は強いパラ選択性のあることがわかった。またメタクレゾールとの反応は他のものに比べ、 ずいぶん反応性が悪く、収率も低いという結果を得た。この結果はクラウンエーテル環と芳香環上の置換基との立体反発が大いに働いているためと考えた。アニリン類についても同様の反応を試みたところジフェニルアニリンにおいては,アミノ基のパラ位に求電子置換反応をおこすが,アニリンあるいはジメチルアニリンではモノフェニルタリウムヒドロキシ錯体になることがわかった。更に二三の複素5員環化合物とモノフェニルタリウムクラウンエーテル錯体との反応を行なったところ温和な条件下で容易に求電子置換反応が進行することが明かとなった。これら生成物はすべて安定で結晶として取り出すことが出来た。 モノフェニルタリウムクラウンエーテル錯体が強い炭素親和性を持っていることか明らかになったので、今まで殆ど研究されていな種々の安定なテトラオルガノシラン(CH_3)_3SiR(R=CH_3,CH_2C_6H_5,)との反応を試みた。その結果選択的にメチル基が夕リウム原子上に移動するという興味ある結果を得た。
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