軟らかい配位子の三級ホスフィンと比較的硬い配位子のピリジンとを種々の骨格で結合したキレ-ト混合配位子を設計、合成し、その遷移金属錯体の構造、性質を調べるとともにその触媒作用を検討することを目的として研究をはじめた。こうした配位子としてまずフェロセン骨格を持ち、面性不斉を有する新規なPーN配位子(1)を合成した。光学活性パラジウム錯体((S)ー2)との反応でジアステレオマ-錯体(3)を合成することにより分割に成功した。(-)の体のPーN配位子と(S)ー2から合成した錯体3のX線構造分析から(-)ー1は(S)体の絶対構造であることを明らかにした。次いでPとPyを種々の長さの骨格で結合させた新規なPーN配位子4(n=1-3)を合成した。これらのPd(II)錯体、Pd(PーN)Cl_2を合成し、その構造を検討した。その結果、n=1の場合はシス体が、n=3ではトランス体が主生成物となることを明らかにした。n=1のシス体、n=3のトランス体(右図)のX線構造解析に成功したが、このトランスーキレ-ト配位錯体ホスフィンとピリジンがトランスキレ-ト配位した最初の遷移金属錯体である。
|