研究概要 |
アミノカルボン酸のコバルト(III)錯体の水溶液に光照射を行い、光反応によって生成するコバルトー炭素結合錯体を合成、単離、同定するとともに、それらの構造、性質を明らかにして行く。 本年度はまず、光反応に用いる原料錯体として[Co(eddp)(en)]cl(eddp= ^-0CO(CH_2)_2NH(CH_2)_2NH(CH_2)_2CO0^-,en=NH_2CH_2NH_2)及びICo(tndp)(en)]cl(tndp= ^-0CO(CH_2)_2NH(CH_2)_3NH(CH_2)_2CO0^-)を新しく合成、カラムクロマトグラフ法により幾何異性体の分離及び光学分割を行った。eddp錯体に対しα,β_1,β_2の3種の,tndp錯体に対しβの1種の幾何異性体を単離することができ,さらにβ_2を除くα,β_1,β体については光学分割に成造した。これら異性体の幾何構造は吸収スペクトル, ^1H, ^<13>C NMRスペクトル,X線結晶構造解析により決定し,光学活性体の絶対配置はCDスペクトルデ-タに基ずいて行った。 上記の原料錯体(ラセミ体4種と光学活性体3種)について光反応を行った。錯豊約0.2gを水にとかし,氷ー食塩冷却下で約60分間光照射(内部照射型,400W高圧水銀ランプ)した。反応液は直ちに陽イオン型カラムクロマトグラフにかけ、目的錯体を分離し、橙黄色結晶として単離した。元素分析、 ^<13>C NMRの結果から、4種の幾何異性体とも配位アミノカルボン酸の二つのカルボキシル基の一方のみが光反応によって脱炭酸し、CoーC結合していることがわかった。CoーC結合の生成については、tndp錯体の光反応生成物のX線結晶構造解析の結果によっても明らかにすることができた。さらに光学活性な原料錯体から、水溶液中で安定な光学活性なCoーC結合錯体を得ることに成功した。この成功は、今後光反応機構を解明して行く上で重要な鍵となる。
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