研究概要 |
本年度は次に示す(1)〜(4)の成果を得た。(1)単核ポルフィリン金属錯体によるNitrite reductaseモデル環元触媒反応の開発;テトラフェニルポルフィリン(TPP)及び電子吸引性のCl,電子供与性のーOMeを導入したTPPーCl、TPPーOMeの金属錯体を用いて、ニトロベンゼンの触媒的還元反応を行ったところ、Fe(III)錯体で速やかに反応が進行し、アニリンが高収率で得られた。これは、nitrite reductaseのモデル反応として興味深い。Ni(II)錯体では反応が全く起こらず、Co(II)錯体ではニトロベンゼンは消失するもののアニリンは全く生成しない。(2)単核ポルフィリン金属錯体による有機金属化学的触媒反応;(1)で使用した各種金属ポルフィリン錯体を用いてα,βー不飽和エステルの水素化反応を試みたところ、この場合もFe(III)錯体で高活性が示され、二重結合のみが選択的に水素化された飽和エステルが定量的に得られた。Ni(II)錯体では全く反応が進行せず、Co(II),Mn(II)錯体ではごくわずかしか反応が進行しなかった。(3)上記触媒反応における溶媒効果;上述した2種の触媒反応は顕著な溶媒効果を示し、ジグライム溶媒中に比べエタノ-ルの添加により著しい活性の向上が得られた。又、分光学的研究及びESR測定からTHFーメタノ-ル系では(TPP)FeClはFe(I)まで還元されること、ジグライムーメタノ-ル系では、[(TPP)Fe^<11>II]^+が活性種と考えられること、配位性のあるDMF溶媒中では活性が低下することなどが明らかとなった。(4)屋根型架橋ポルフィリン鉄2核錯体(Fe_2Cl_2ーgable)による触媒反応;Fe_2Cl_2ーgableを用いて、ニトロベンゼン類の還元反応を試みたところ、速やかに反応が進行し、アニリンが高収率で生成した。現時点では顕著な2核錯体の共同作用による触媒活性の向上はみられていないが、還元されにくいpーニトロアニソ-ルの場合には、単核の(TPP)FeClよりも高い活性が示された。今後、2核錯体の共同作用を利用した錯体の共同作用を利用した環元触媒反応の開発を行う。
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