昨年度はロジウム(III)およびクロム(III)のトリスエチレンジアミン錯体の種々の塩化物水溶液について溶液X線回折測定を行い、同形置換処理により中心金属まわり動径分布関数D^<Rh>(r)を求め第1配位圏の構造と同形置換の有効さを確認したが、配位子のアミノ基近傍の第2配位圏における塩化物イオンおよび水分子の位置と数についての明確な結論は得られなかった。本年度は、原子散乱因子の大きさが塩化物イオンよりかなり大きい臭化物イオンあるいはアミノ基との相互作用が相対的に弱いと思われる過塩素酸イオンなどを用い測定を行い、アミノ基近傍の構造がどのように変化するかを調べその構造を追及した。その結果、過塩素酸塩水溶液の測定から得られたD^<Rh>(r)は塩化物水溶液の場合とかなり様子が異なり、ピーク面積の大きさは3.5〜5.0A^^○領域では塩化物のときより小さく、逆に5.0〜7.5A^^○領域では大きくなっていたことから、過塩素酸イオンは主としてメチレン基のみに接触して会合しており、過塩素酸塩水溶液のD^<Rh>(r)の3.5〜5.0A^^○A領域は水分子によるものであると推定された。解析の結果、水分子は3.9A^^○に2.5個、4.34A^^○に4.7個、4.85A^^○に3.1個存在することが明らかになった。次に、この結果を参考に、臭物水溶液について得られたD^<Rh>(r)を解析すると、4.64A^^○に1個の臭化物イオンが存在することが分かった。同様に、昨年度測定した0.3Mおよび3.9M塩化物水溶液については、いずれも塩化物イオンが4.50A^^○に1個存在するという結論が得られた。また、これら陰イオンは約1個の4.34A^^○の水分子と入れ代わってアミノ基に接触しているものと推定された。ヨウ化物水溶液については、溶解度の上限が0.06M程度と低かったため、解析に耐えられるD^<Rh>(r)が得られなかった。硫酸塩水溶液の測定からは、硫酸イオンはアミノ基と接触して存在するが、幾つかの配向状態をとって水素結合していることが示唆されるD^<Rh>(r)が得られた。
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