ロジウム(III)およびクロム(III)のトリスエチレンジアミン錯体の塩化物、臭化物、ヨウ化物、過塩素酸塩、硫酸塩の水溶液について溶液X線回折測定を行い、同形置換処理により中心金属を原点とした動径分布関係D^<Rh>(r)を求めた。まず、第1配位圏について、結晶中とほぼ一致した結果(2.08Åに窒素原子が6個、2.90〜2.95Åに炭素原子が6個)が得られ、また、そのピークの対称性が良いことから、本研究における同形置換法の適用の有効性が確認された。第2配位圏については、D^<Rh>(r)中に配位子のアミノ基近傍の構造を反映していると推定される独立したピーク群が3.5〜5.0Åに出現した。このピーク群は塩の種類によって異なることから、この領域に陰イオンが存在することが示唆された。その中で、過塩素酸塩水溶液のD^<Rh>(r)は塩化物水溶液の場合とかなり様子が異なり、ピーク面積の大きさが3.5〜5.0Å領域では塩化物のときより小さく、逆に5.0〜7.5Å領域では大きくなっていることから、過塩素酸イオンは主にメチレン基のみに接触して会合しており、過塩素酸塩水溶液のD^<Rh>(r)の3.5〜5.0Å領域は水分子によりものであると推定された。解析の結果、水分子は3.9Åに2.5個、4.34Åに4.7個、4.85Åに3.1個存在することが明らかになった。次に、この結果を参考に、臭化物および塩化物水溶液について解析を行い、臭化物イオンは4.64Åに1個存在し、塩化物イオンは0.3Mでも0.9M水溶液でも4.50Åに1個存在するという結論を得た。更に、これらの陰イオンはいずれも約1個の4.34Åの水分子と入れ代わってアミノ基に接触しているものと推定された。ヨウ化物水溶液については、溶解度の上限が0.06M程度と低かったため、解析に耐えられる結果が得られなかった。硫酸塩水溶液では、硫酸イオンはアミノ基と接触して存在するが、幾つかの配向状態をとって水素結合していることが示唆される結果が得られた。
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