研究概要 |
本年度の実施計画に従ってM^<2+>(M=Ni,Pd,Pt)/dppe[1,2ービス(ジフェニルホスフィノ)エタン]/NaSH,NaSeHの系について合成を行い、[M_3E_2(dppe)_3]^<2+>(M=Ni,Pd,Pt;E=S,Se)で表される合計6種の3核錯体を得ることに成功した。このうち[Ni_3S_2(dppe)_3][PF_6]_2・MeCNと[Ni_3Se_2(dppe)_3][BPh_4]_2のX線結晶構造解析を行った。これら錯陽イオンの構造は3つの四角形の配位平面NiE_2P_2が2つのμ_3ーE(E=S,Se)を共有した形である(図)。錯体の中央にはNi_3E_2からなる3核両錐の核があり、結合距離などは[Ni_3S_2(dppe)_3][PF_6]_2・MeCNではNiーS2.192,Ni…Ni2.827,S…S2.924Aであり、[Ni_3Se_2(dppe)_3][BPh_4]_2ではNiーSe2.311,Ni…Ni3.004,Se…Se3.051Aである。金属間には直接の相互作用はなさそうである。得られた錯体について20℃と-18℃でN,Nージメチルホルムアミド(DMF)とアセトニトリル(MeCN)中でサイクリックボルタムグラム(CV)を測定した。[Ni_3E_2(dppe)_3]^<2+>( E=S,Se)はともに-18℃,MeCN中で2つの可逆なカップルを示し、これらは1電子が関与している酸化還化波である。[M_3E_2(dppe)_3]^<2+>(M=Pd,E=S,Se;M=Pt,E=Se)は-18℃,DMF中で可逆な1つのカップルを示し、これは2電子が関与した酸化還元過程である[Pt_3S_2(dppe)_3]^<2+>は可逆なカップルを示さなかった。このようにして得られたCVの酸化還元電位から[M_3E_2(dppe)_3]^<2+>について還元されやすさを金属について比較するとNi>Pd>Ptの順であり、EについていえばSe>Sである。
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