研究概要 |
本年度は、まず、(1)1ーphenylethylamineを配位子としてふくむ金属錯体について検討した。共存する配位子としては、環状イミドを選んだ。Pd(II)錯体については、(R,S)ーアミンと(S,S)ーアミンの組合せにより、異なる回転異性体が生じる事を見いだした。一方、銅(II)の系では、同じアミンの組合せが環状イミドの軸不斉を引き起こす事を見いだした。環状イミドの種類により、これらの現象は微妙に変化する。生理活性を示す物質として、医薬品として多用されている環状イミドに関して、基本的な金属錯体を用いて、新しい知見をもたらすことが出来た。(2)ヘミカルキラテイを有する金属錯体の開発に関して、新しい三核錯体の合成に成功した。この錯体では、フェロセンが組み込まれており、官能基の導入は容易である。また、シス位にある二つのアゾメチン結合の間に新しい炭素一炭素結合の生成が見られたので、新しい配位子合成への発展も期待できる。また、この反応は立体保持で進むことが予期されるので、立体選択的な不斉合成の可能性もあり、現在検討を進めている。(3)光学活性配位子を含むコンバルト(III)の系については、シッフ塩基の錯体について、そのジアステレオ選択性が溶液の示す光学純度と関連し、たとえば、同じラセミ形の結晶がパッキングにおいて異なる場合があるという多形の現象をセカンダリイブチル基を含む場合について見いだした。結晶のパッキングの検討が進行中である。
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