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D.melanogasterにおいて、生殖細胞質の移植により作成したヘテロプラズミー系統では、ミトコンドリアDNA(mtDNA)の伝達は、核ゲノムとmtDNAの組み合わせ、および飼育温度に依存して選択的に起こる。このようなミトコンドリア伝達の制御機構を明らかにするため、選択の温度依存性における核ゲノムの効果とmtDNA複製の関与について、解析を行った。1.D.melanogasterの2系統間、および温度依存性が著しく異なる2系統の核ゲノムを互いに置換してD.mauritianaのmtDNAを共存させたヘテロプラズミー系統を用い、mtDNAの伝達を19℃と25℃で調べた。これまでに得られている結果をあわせ、2種類のmtDNAの組み合わせが同じ場合を比較した結果、それぞれの核ゲノムに特徴的な温度依存性の選択を示すことがわかった。2.D.melanogasterにD.mauritianaのmtDNAを共存させたヘテロプラズミー系統を用いて、選択の温度感受性を、発生のいくつかの時期について調べた。選択は、ミトコンドリアが活発に増殖すると考えられる卵形成期に、温度の効果を最も受けた。3.mtDNAの複製の開始点を含むA+T-rich領域のみが互いに異なるようなmtDNAをもつD.mauritianaとD.simulansを用い、D.melanogasterにそれぞれを共存させたヘテロプラズミー系統では、選択の強さは異なるが温度依存性は同じであった。4.分子量の異なるmtDNAをもつD.melanogasterの2系統間で作成したヘテロプラズミー系統においては、いずれの核ゲノムの場合にも、分子量の大きいmtDNAが選択的に除かれ、温度による違いはみられなかった。
以上の結果から、mtDNAの選択的伝達における温度依存性には、核ゲノムが大きな効果をもつことがハッキリと示された。さらに、選択は、mtDNAの複製に関する性質の違いに基づくことが示唆された。これらのことは、ミトコンドリア伝達の制御機構を分子レベルで解明するための重要な基礎を与えるものである。
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