研究概要 |
接合伝達は、細菌細胞種内、種間の遺伝物質の伝達に関与しており、細菌における遺伝情報の交換ひいては進化の問題を考察する上で重要な過程である。本研究は不和合性群IIに属するプラスミドR64の接合伝達領域(54kb)の全体像を明らかにする目的で、この領域の全塩基配列を決定するとともに、各遺伝子の産物を同定、さらにその突然変異体を作成し、各遺伝子の接合伝達における役割を明らかにすることを目的とした。 従来の我々の研究により、54kbからなるR64の接合伝達領域のうち、oriTオペロン約4kbおよび線毛形成領域約19kbの領域のDNA塩基配列はすでに決定されていた。今回の研究により、一部片鎖だけであるが、54,089bpの全塩基配列を決定することができた。この間、2.2kbのギャップを除いてほぼ全域に遺伝子領域が存在すると考えられる。一部片鎖だけであるので正確にはいえないが、現在まで少なくとも39個のORFが認められた。さらに数個のORFの存在が推定される。2遺伝子を除いて他の遺伝子は同方向に並んでいる。2個の調節遺伝子traBC、14個の細線毛形成遺伝子群pilI-V、pilVのC末端部を7種に変換させるシャフロンDNA再編成の部位特異的組換え酵素をコードしているrci、EDTA耐性ヌクレアーゼをコードするnuc、大腸菌dnaG変異を抑制するsog、表面排斥に関係するexc、oriT特異的ニッケースをコードするnikAB等の遺伝子群が現在まで同定されている。各遺伝子の遺伝子領域を決定し、遺伝子産物を検出するとともに、挿入、欠失変異を作成し、機能の解析を行った。さらにR64接合伝達遺伝子群の発現制御に関する研究をおこない、traBC遺伝子がnuc、sogを含むオペロンの正の調節をしていることを明らかにした。
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