研究概要 |
コムギ・エギロプス属植物をモデルシステムとして、ミトコンドリアゲノムに転移した葉緑体DNA断片の転移機構およびミトコンドリアゲノム内での保持機構を解析する目的で本年度は以下の実験を行った。5つの葉緑体遺伝子(atpA;ATP合成酵素サブユニットI、psaA;光合成系I複合体Aサブユニット、rbcL;リブロ-ス二リン酸カルボキシラ-ゼ大サブユニット、3'ーrps12;3'ーリボゾ-ムタンパク質S12、5'ーrpl2;5'ーリボゾ-ムタンパク質S12)に関して、ミトコドリアゲノムへの転移の有無を調べた。上記5種類の遺伝子に特異的なプロ-ブを作製し、パンコムギミトコンドリアDNAのマスタ-サ-クルをカバ-するコスミドクロ-ンに対してサザンハイブリダイゼ-ション解析および遺伝子内の種々のプライマ-を合成し、PCR解析を行った。atpA,psaA,3'ーrps12および5'ーrps12の転移が確認され、rbcLの転移は検出されなかった。転移が確認された葉緑体遺伝子に関して、パンコムギミトコンドリアDNAマスタ-サ-クル物理地図上にマッビングした。ミトコンドリアゲノム内で、atpAとpsaAは翻訳領域の5'ー末端と3'ー末端の両方あるいは一方が欠落していた。 3'ーrpl12は、第2エクソンの5'ー末端が欠落し、イントロンと第3エクソンが保存されていた。5'ーrps12は、翻訳領域のほぼ全域が保存されていた、近縁な植物間での葉緑体DNAのミトコンドリアゲノムへの転移の様相と転写レベルでの遺伝子発現調節を体系的に調べるため、コムギ・エギロプス属植物の14の細胞質型の細胞質置換系統の黄化芽生えより、ミトコンドリアを単離し、DNAおよびRNAを抽出した。細胞質置換系統が得られないものについては、全DNAをCTAB法にて抽出した。
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