マメゾウムシ類を対象に、異質なパッチが散在する環境での産卵分布パタ-ンを、雌密度との関連で解析した。まず、アズキゾウムシに粒数の異なるリョクトウのパッチを与え、雌虫の導入密度を変えて各パッチの産下卵数を調べた。また、大粒と小粒のパッチを与えて同様に産下卵数を調べた。アズキゾウムシは卵殼や産卵規制物質を知覚して卵を一様に分布することがすでに知られている。実験の結果、粒数を変えた場合にはパッチ間移動にさほどコストを要しない小ケ-ジだけでなく、大きなコストを要する大ケ-ジにおいてさえも、導入雌密度が増すに連れて産下された卵数比が豆の粒数比に等くなり、羽化成虫の生重量が等しくなった。また、粒サイズが異なる場合には、大粒からの羽化雌虫生重が小粒からの羽化生重と等しくなるまで小粒パッチにはほとんど産卵しないことも分かった。これらの過程は理想自由分布の予測と一致した。この過程をパッチ間の移動を決める最適資源選択と、豆への産卵を表わす連立微分方程式を組み合わせてモデル化したところ、パッチ間移動を繰り返しながら時間が経つにつれて理想自由分布が近づく予測結果が得られた。 また、塊状産卵分布を示すブラジルマメゾウムシで、豆の種類を代えてその産卵分布を調べたところ、分布集中は粒径が小さく丸い形のリョクトウにおいて最も低く、粒径が大きく長円形のインゲンマメにおいて最も高い値となった。寄主植物クララの豆に固め産みするシャ-プマメゾウムシでは、雌密度が低いときにはランダムに産卵し高密度で固め産みに転換すること、固め産みは幼虫の発育を速めるので1粒から1匹しか成虫になれないコンテスト型競争で有利となること等が分かった。これら集中産卵分布を示す種では理想自由分布からはずれるが、アズキゾウムシとの相違をもたらしている要因とその機能の解明には今後の研究が必要である。
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