研究概要 |
植物プランクトンにより生成される溶存態有機物の量および組成、および溶存態有機物のバクテリアによる利用を知るため、以下の実験を行った。 1.植物プランクトンにより生成される溶存態有機物の量、および組成に関する実験 東京大学海洋研究所の研究船「白鳳丸」の研究航海(KHー91ー3)に乗船し北太平洋亜寒帯海域(45°N,165°E)および亜熱帯海域(25°N,165°E)の2測点において、植物プランクトンによる 13^C取り込み実験を実施した。実験後、溶存態有機物は凍結して研究室に持ち帰り、植物プランクトンの排出物同定の為の検討に用いた。この際、海水中に含まれる多量の塩分は、植物プランクトンの排出物の同定、定量のための化学分析に対して大きな弊害となる。このため,限外ろ過膜を用いて脱塩の検討を行った。高分子量の有機物は効率よく脱塩が可能であったのに比べ、低分子量有機物の回収率が悪い傾向にあった。この点については、今後の検討課題である。 2.バクテリアによる溶存態有機物の利用 北太平洋亜寒帯および亜熱帯海域において、インキュベ-ション実験で得られた試料についてバクテリア固有の脂肪酸の ^<13>C同位体比の変化を明らかにすることを試みた。その結果、亜寒帯域ではバクテリア固有の脂肪酸の ^<13>C同位体比が若干増加していることが確認された。これは、バクテリアが植物プランクトンにより生成された溶存態有機物を、炭素源として利用していることを示唆している。しかし、亜熱帯海域ではバクテリア固有の脂肪酸の濃度は極めて低いために、バクテリアが植物プランクトンが生成した溶存態有機物を用いているか否かについての詳細な検討はできなかった。
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