研究概要 |
人間活動のあり方と植物群落を中心とした景観要素の分布や変化のパタ-ンとの対応関係と明らかにすることを本研究の最初の目標とした。そのために,山地部の徳島県東祖谷山村,都市と結び付く範囲が広がりつつある広島県の太田川領域(加計町,芸北町など),農業地亦域の広島県三和町(内陸部)および徳島県松茂町(都市近郊の海岸部),島しょ部の広島県倉橋町、下蒲刈町で研究をすすめた。 東祖谷山村では,村内の3地域を対象に1954年,1975年,1990年撮影の空中写真を用いて,景観要素の分布および変化パタ-ンをリニア・サンプル法により比較し,空間的および時間的側面から景観構造の類型化を行った。リニア・サンプル法の有効性が東祖谷山村で確認されたので,より広範囲な太田川流域でも本方法を利用し,流域内の景観構造から見た地域の類型化の方法を検討した。 内陸部の農業地である三和町ではアカマツ株が景観要素のなかでも卓越していた。本地域ではアカマツ群落の群集構造の解析から景観変化のメカニズムを明らかにし,ナラ林に変化することを予測した。一方、海岸部の農業地域では森林性の群落は植裁された並木(主にクロマツ群落)しかなかった。宅地化の進行とともに,この並木の総延長や個数は減少していた。しかし,クロマツ群落内の植物が燃料源として利用されなくなった現在では,鳥による種子散布によってマサキやトベラなどの植物が侵入,定着していた。鳥類や木本植物の維持に並木が重要な役割を持つ。 島しょ部の下蒲刈町では,景観要素としてミカン果樹園の優占度が高かったが,経済的な変化に連動としてその面積が減少し,他の群落におきかわった場所があった。この変化は利用しにくい場所に立地した果樹園で顕著であった。また,より広い面積の倉橋町では,景観構造や変化のパタ-ンに島内での地域差が認められた。
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