1。北海道のおもにダケカンバよりなる林の調査を10月上旬に行い、今年度の生長のデータを取り終えた。測定項目は、各種各個体の樹高、胸高直径、枝下高である。また、遺伝的構造を解析するために7月に生葉を採集した。採集したサンプルについては、酵素多型を遺伝的マーカーとしてデンプンゲル電気泳動法により遺伝的構造の解析を進めている。2。三宅島でのスダジイ・タブ林の調査を12月上旬に約1週間かけて行った。測定項目は各種各個体の樹高と胸高直径である。今年度までのデータを用いて特に個体数の多いスダジイ、イヌビワ、ハチジョウグワ、オオムラサキシキブに注目し、これらの種の生長動態を解析した。その結果をまとめると、(1)常緑樹であるスダジイは樹高の高い個体も低い個体も共に樹高生長を続けている。(2)噴火後新たに侵入してきたイヌビワ、ハチジョウグワ、オオムラサキシキブのうち、イヌビワ、オオムラサキシキブは樹高の高い個体でも枯死する個体がみれら、また樹高生長も落ちているが、ハチジョウグワは樹高の低い個体に枯死した個体が集中し、高い個体は樹高生長を続けている。これらの結果から、この調査区のある森林は、噴火以前のようなスダジイを中心とした森林に戻りつつあるが、噴火後新たに侵入してきたハチジョウグワが林冠を構成する樹種の一つとして残る可能性があると考えられる。3。富士山の五合目では多年生クローナル植物であるイタドリとオンタデが共存している群落がパッチ状に多く見られる。昨年度と同様にそこでいくつかのプロットを設定し、その中の両種全シュートのサイズを6-8月に一定間隔で測定した。解析結果はほぼ昨年度と同様であった。昨年度の結果をあわせて原の拡散モデルを用いてさらに詳しい解析を行っている。
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