1。北海道の若いダケカンバ純林の調査を例年どうり10月上旬に行った。測定項目は、各種各個体の樹高、胸高直径、枝下高である。2。三宅島でのスダジイ・タブ林の調査を例年どうり12月上旬に約1週間かけて行った。測定項目は各種各個体の樹高と胸高直径である。3。富士山の五合目では多年生クローナル植物であるイタドリとオンタデが共存している群落がパッチ状に多く見られる。例年どうりにそこに設定してあるいくつかのプロットの中の両種全シュートのサイズを6-8月に一定間隔で4回測定した。4。富士山五合目のシラビソ、トウヒ、ダケカンバ、カラマツよりなる林に1haのプロットを1993年11月に新たに設定して各種各個体の胸高直径と位置を測定した。また、生長動態、競争様式、およびサイズ構造の安定性に関する理論的な研究を行った。上記の調査結果とこれまでに蓄積してある森林の生長に関するデータ(北八ケ岳、大山、大雪山など)をこの理論的研究結果に基づいて解析した結果、以下の主な結論を得た。1。若いダケカンバ純林の個体間競争様式は一方向的であり(データの解析結果)、個体間競争が主に林の構造を決定している(理論的研究の結論より)。2。その他の多種系の極相林では個体間競争は対称的であり(デーの解析結果)、競争以外の要因、たとえば実生の定着過程などが群集構造を規定している(理論的研究の結論より)。3。イタドリとオンタデの競争様式も対称的であった。4。従って、極相林における種の多様性は対照的な競争様式と密接に結びついている。これらの研究成果に基づき7編の論文が発表(または印刷中)されている。さらに、3編の論文を投稿中である。現在、さらに3編の論文をとりまとめ中であり、これら13編の論文を合わせて今回の研究成果とする。
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