入鹿池は愛知県犬山市の東部丘陵地に位置する大型の潅漑用ため池であるが、これまでの試水採取期間中、大きな水位変動はなく、16m前後の水深を維持している。試水は、堰堤から100m程沖合いの定点で、1991年7月より月1〜2回、表層から低層まで1m毎に採取し測定した。 入鹿池の透明度は2〜3mの範囲にあり、表面水のpHは6.8〜7.4である。表面水の水温は夏季から冬季にかけて20℃程低下するが、低層水のそれは6℃程である。したがって、夏季には上下約15Cの温度差が生じるが、垂直的には比較的なだらかに変化し、顕著な水温躍層はない。一方、11月以降の上下温度差は1℃程であり、ほぼ均一な温度分布となる。この停滞期から循環期への移行は10月で、それとともにD0の垂直分布も大きく変化する。夏季停滞期において25%以下となっていた低層水のD0飽和率は、11月以降は全層がほぼ飽和状態となる。循環期2月・3月の表層水のD0飽和率は夏季のそれ以上に高く、150%を超える。 生態環境の指標とした太腸菌群は、冬季循環期は全層に一様に分布する。また冬循環期の試水1ml中の総生菌数(栄養寒天培地で培養)は約千個で、全層に一様に分布する。テトラヒメナは、試水の無菌濾過・オ-トクレ-ブ処理液では増殖しないが、これにグルコ-スかアミノ酸混液を加えると増殖をし、ビタミン混液では増殖をしない。しかし、ビタミン混液をアミノ酸混液とともに添加すると最も良好な増殖が得られ、試水中にま充分の無機塩の存在が示唆される。 入鹿池の主なプランクトンは、黄緑鞭毛虫類のChromulina、珪藻類のMelosira、Asterionella等である。試水中のバクテリア(未同定)を、ポリリジンでコ-ディングしたミクロ培養器のガラス面に付着させ、試水濾過液を潅流して培養すると、水温20℃でその世代時間は約48時間である。
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