貧栄養条件下で生育する微生物の増殖を調べることを目的とした。調査した湖沼は、木曽川の河跡湖「温故井池」(一宮市)、長良川の氾濫で生じた落堀「勝賀池」(長良川下流右岸)、かんがい用ため池「入鹿池」(犬山市)である。温故井池、勝賀池はともに富栄養湖であった。 入鹿池は周囲12km、面積160m^2の大型のため池である。試水は、堰堤から100m程沖合いの定点で、1991年7月より月1〜2回、表層から低層まで1m毎に採取し測定した。1991年度は大きな水位変動はなく、16m前後の水深を維持したが、1992年度の夏季から秋季にかけて水位が8mまで低下し、その後冬季には12mにまで回復した。水位は変化したが夏季停滞期・冬季循環期という性質は維持した。冬季循環期には、アンモニアは0.01μg/ml以下になるが、硝酸は0.3μg/ml存在する。しかし、燐含量は0.01μg/ml以下となり貧栄養湖状態になる。テトラヒメナは、試水の無菌濾過・オートクレーブ処理液では増殖しないが、これにグルコースかアミノ酸混液を加えると増殖をし、ビタミン混液では増殖をしない。しかし、ビタミン混液をアミノ酸混液とともに添加すると最も良好な増殖が得られ、試水中には充分の無機塩の存在が示唆される。 冬季循環期の試水1ml中の総生菌数(栄養寒天培地で培養)は約千個で、全層に一様に分布し、生態環境の指標とした大腸菌群は、試水100ml中に10個程度にすぎない。試水から分離した大腸菌(富栄養培養)を25゚Cの富栄養寒天培地で培養すると、細胞周期時間は80分、分裂時の細胞サイズは6μmである。これを、試水の無菌濾過・オートクレーブ処理液をかん流法で培養すると、数パーセントの細胞が増殖をし、細胞周期時間が6時間、分裂時の細胞サイズが3.1μmを経て、細胞周期時間が12時間、分裂時の細胞サイズは2μmとなる。これら小型細胞がさらに増殖を続けるのか否か等、月単位の長期の連続観察が必要である。
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