研究概要 |
1991年7月24日から8月12にかけて瀬戸内海,家島において隔離水界(直径5m水深約18m)を用いた実験を行った。隔離水界内に窒素・リン等の栄養塩を添加することで隔離水界内の植物プランクトンの組成は大きく変動した。採水は実験期間中の毎日一回,表層から底層まで(0,2.5,5,7.5,10,15,17m)行い,GF/DおよびFF/F濾紙上に濾別した試料から光合成色素を90%アセトンにて抽出し,高速液展クロマトグラフィ-(HPLC)にて分析した。試水中の植物プランクトンを検鏡により同定し,上記方法の検証を行う必要があるが,この同定は専門家に依頼中である。過去のデ-タの多変量解析で珪藻・渦鞭毛藻・ラフィド藻が主構成要素の場合には良好な結果が得られているが,これらにさらに緑藻やクリプト藻の加わった場合には解析が困難であった。本年度もクリプト藻に特有のカロテノイドであるアロキサンチンが見い出された。これを解析するため,実験室系でCtyptomonas4種類を培養し,それらを標準試料としてHPLCにて分析した。この結果,新たに,クリプト藻の加わった場合の解析が可能になった。 また,上記の隔離水界内の3層にセディメントトラップを設置し,沈降物を捕集した。同様のHPLC分析で,沈降物中の色素を分析したところ,クロロフィルの分解物が,マ-カ-となる綱に特有のカロテノイドと近い保持時間であり,分離が困難である事が判明した。水中の試料では,クロロフィル分解物存在量が少なく,問題にはならないが,沈降物中には,多くの分解物が存在した。そこで,新たに,フォトダイオ-ドアレイ検出器を用いた分析方法を開発した。この各標準色素の吸収スペクトルを用いて最小2乗解析する分析法によって,沈降物のように,分解物を多く含む試料についても解析が可能になった。
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