本研究では、イネ老化葉における細胞質型グルタミン合成酵素(GS1)と窒素転流先でのNADH依存性グルタミン酸合成酵素(GOGAT)に着目し、イネの窒素転流におけるこれらの役割を、分子生物学的手法を用いて解明することを目的とし、以下の成果を得た。 1.イネ老化葉におけるGS1ー1)イネ着生葉の老化に伴うGS1ポリペプチドの単葉内分布変化を、葉緑体GS(GS2)・FdーGOGAT・Rubisco・グルタミン酸脱水素酵素(NADHーGDH)ポリペプチドの分布と、それぞれ特異抗体を用いた免疫学的手法で比較した。その結果、GS1ポリペプチドは葉身の中央部に多く、その含量は老化後期でも大きな変化を示さず、先端部に多く存在し、老化に伴って著減する他の酵素タンパク質とは異なっていた。また、GS1mRNAは、葉身各部位において、老化に伴い微増していることが明かとなった。2)Tissue Print Immunoblot法によるGS1・GS2タンパク質のイネ葉組織内分布を検討した結果、GS1は維管束系に局在しており、葉肉細胞に局在していたGS2・FdーGOGAT・NADHーGOGATとは全く異なっていた。以上の結果は、GS1が老化葉でのGluからGluへの変換を担っていることを強く示唆しており、その成果をPlant Physiol.に投稿した。 2.生長中の組織におけるNADHーGOGATー1)窒素の転流先において、GluからGluへの変換を担う可能性のあるNADHーGOGATを、世界に先駆けて生成し、その特異抗体を得た。2)この抗体を用いて、NADHーGOGATポリペプチド含量及びその活性が、イネ葉身の葉鞘に包まれた未展開葉身及び3)穂において、高いことが明かとなった。以上の結果は上記の可能性を強く示唆し、その成果を1)はPlant Physiol.に投稿し、現在印刷中である。また、2)と3)については現在投稿準備中である。
|