昨年度の研究により、孔辺細胞における青色光に依存するプロトン放出に、カルモジュリンとカルモジュリン依存のミオシン軽鎖キナーゼが関与する結果を得た。本年度は上記の結果を踏まえて実験を行ない、以下の結果を得た。 1 青色光依存のプロトン放出を阻害する薬物(例えば、ミオシン軽鎖キナーゼの阻害剤ML-7やカルモジュリン拮抗剤W-7)とプロトンポンプの活性化剤として知られるカビ毒フシコクシン(FC)を組合せて用いる事により、青色光に依存するプロトン放出阻害剤がプロトンポンプそのものは阻害せず、光受容からポンプ活性化に至る情報伝達系(まだ未知である)を阻害することを示した。すなわち、ML-7の存在下で青色光を当てると、プロトン放出は阻害されるが、そこへFCを添加するとプロトンの放出が回復し、その速度はML-7を加えない対照とほぼ同じあった。 2 孔辺細胞蛋白質のリン酸化、脱リン酸化を孔辺細胞プロトプラストを明・暗の両条件において調べた。孔辺細胞プロトプラストを^<32>Piを加えて培養すると、42、40、34、32、26、19kDの蛋白質がリン酸化された。光照射により、26kDの蛋白質が脱リン酸化され、730nmの赤外光が最も有効であった。しかし、光を消すと26kDの蛋白質は直ちにリン酸化された。この蛋白質は、葉緑体に存在し、DCMUやジチオナイトなどの効果から Light-harvesting chlorophyll a/b蛋白質複合体(LHCII)であると結論された。葉肉細胞ではLHCIIは、通常、光でリン酸化され、暗黒下で脱リン酸化される事から、今回、発見された孔辺細胞LHCIIの特異な挙動は気孔開閉と何等かの関連があると思われ、現在研究中である。 一方、青色光に依存してリン酸化される蛋白質を追求したが、上記の方法では見出されなかった。この点については検出方法に新たな改良を加えて、予備的であるがポジティブ結果を得ている。
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