研究概要 |
(a)マトリックス多糖分子の分解 植物細胞の伸長成長に深く関係している細胞壁多糖は双子葉植物ではキシログルカン、イネ科植物では(1→3),(1→4)-β-D-グルカンである。双子葉植物からアズキ上胚軸、イネ科植物からイネ幼葉鞘を材料として選び、両多糖の分解酵素の精製をめざした。 アズキ上胚軸細胞壁より1M NaC〓で可溶化されるタンパク質画分には、キシログルカン・オリゴ糖を精製する酵素並びにより大きな分解産物を生じる酵素が含まれる。両者をHg^<2+>を用いて区別し、ConA-Sepharoseを含む各種のクロマトグラフィーにより精製した。 イネ幼葉鞘細胞壁には、(1→3),(1→4)-β-D-グルカンの分解に関与するエンド型並びにエキソ型の2種のグルカナーゼが含まれる。両者を各種クロマトグラフィーにより精製した(保尊、神阪)。 (b)マトリックス多糖分子の修飾 フェルラ酸をアラビノキシランのアラビノース側鎖にエステル結合させる酵素はまだ発見されていない。そこで、オートムギ幼葉鞘から得た粗酵素液にアラビノキシラン、フェルラ酸、ATP、アセチルCoA等の基質を加えて、本酵素の活性検索を試みたがまだ成功していない。酵素活性を検出できない原因の一つは、この実験系では前駆体であるフェルロイルCoAが精製されないためであると考えられる。そこで、本年度はこの問題を解決するために、まずフェルラ酸とマロニルチオフェノールと反応させてフェルロイルチオエステルを合成し、次にこのエステルとCoAを反応させることによって、フェルロイルCoAを化学的に合成した(神阪、保尊)。
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