1.ジベレリン(GA)受容体異常と推定されるトウモロコシの矮性体D_8と正常体(N)の幼葉鞘において、表皮細胞接線方向面の表層微小管(MT)の配向を顕微常光抗体法によって観察比較し、細胞伸長との関係を調べた。次のような結果が得られた。1)D_8の幼葉鞘の伸長速度はNよりも遅く、最終長も短い。これは主として細胞長の短いことによる。2)Nでは伸長軸に対して直角配向するMTをもつ細胞が優勢であるが、D_8では斜め・縦配向のMTをもつ細胞が顕著である。3)GA合成阻害剤のウニコナゾ-ル(Un)はNとD_8の細胞長を短くし、幼葉鞘の伸長を抑える。4)UnはN、D_8ともに、直角配向のMTをもつ細胞を著しく減少させ、縦配向のMTをもつ細胞を増加する。以上のことから、D_8の矮性発現は主として、細胞長の短いことによると考えられるが、これは直角配向のMTをもつ細胞の少ないことと関係があると推定される。また、幼葉鞘の伸長は内生GAによって調節を受けており、D_8では内生GAが有効に作用し得ないことが示唆される。 2.明所で育ったキュウリ胚軸の伸長はGAで促進され、アブシジン酸(ABA)で阻害される。MTの配向を表皮細胞接線方向面(Ept)、放射方向面(Epr)及び皮層細胞放射方向面(Cr)で観察すると、GAは伸長軸に対して直角配向のMTをもつ細胞を増加させ、ABAは、反対に縦・斜め配向のMTをもつ細胞も増加させる。Crには直角配向のMTしかみられず、また、Eprもほとんどの細胞が直角配向のMTをもつが、ABA処理により、これらにおいても、斜め・縦配向のMTが目立つようになる。ABAとGAはMTの配向に対して、相互に反対の作用をするようである。胚軸の伸長速度とEptにおける直角配向のMTとの間には高い相関がある。
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