交付申請書に記した研究計画通りに研究を行い、いくつかの新しい結果を得た。即ち、50μg/mlエチヂウムブロミド処理、または、10mg/mlクロラムフェニコ-ル処理をした場合、ユ-グレナのヌクレオイドにどのような変化が生じるかを主として調べた。未処理細胞で細胞分裂直前の細胞は300ー350個のミトコンドリアヌクレオイドが含まれている。エチヂウムブロミド処理をした場合、個体による測定値の変動はかなり大きいが1細胞当りのヌクレオイド数は平均すると約3分の1に減少する。処理3日後はヌクレオイド数は約6分の1に減少する。ヌクレオイドの検出されない個体も観察された。10日後は約10分の1に減少する。ミトコンドリア自体はエチジウムブロミド処理により全体として細くなり、クリステ-の数は著しく減少するが、部分的に結節状の肥大部をもち、その部分ではクリステ-の変形と思える偏平な膜構造がみられた。クロラムフェニコ-ル処理した場合、ヌクレオイド数の減少はみられず、1週間後にはヌクレオイド数は僅かに増加した。しかし、未処理細胞でみられたような強く蛍光を発するヌクレオイド数は減少した。ミトコンドリア自体はクロラムフェニコ-ル処理で太くなり、クリステ-の絶対量も増加した。ミトコンドリアの基質部分の電子密度も高かった。これらの観察から、エチヂウムブロミドは50μg/mlという低濃度でもミトコンドリアヌクレオイドの複製を阻害し、それによってクリステ-の形成にも著しい影響を及ぼすと考えられた。また、クロラムフェニコ-ルの場合は、クリステ-量がむしろ増加したこと、基質部分が高電子密度であったことなどから、ミトコンドリア内でのタンパク合成が妨げられていても細胞質で合成されたミトコンドリアタンパクはミトコンドリア内に入って行けたし、入る量についての規制が失われ必要以上の転入のために、非処理細胞より大きなミトコンドリアが生じたと推測された。
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