平成3・4年度の2年間に、本研究課題について以下の(1)(2)の研究成果をえた。 (1)ユーグレナのミトコンドリア核様体に及ぼすエチジウムブロキド(EB)とクロラムフェニコール(CAP)の影響。EBはミトコンドリアの核様体のDNAと結合しDNAの複製を阻害し、CAPはミトコンドリア内のタンパク合成を阻害するといわれている。0.13mMのEB処理をすると、処理直後1細胞あたり300-350個あった核様体は3日後には約1/3に減少した。処理10日後には平均して1/10にまで減少した。核様体をまったく持たない個体も出現する。EB処理ではミトコンドリアは細くなり、クリステーを含まない部分が多くなるが、部分的に結節状の肥大部が出現しそこでは異常に発達したクリステーが認められた。46mMのCAP処理をすると、3日後にミトコンドリアの太さが大きくなり、クリステーの総面積は増大するがミトコンドリア核様体数には変化はみられなかった。 (2)ユーグレナのミトコンドリア核様体のDNAの免疫電顕的検出。抗原DNAと抗DNA抗体を最初に結合させ、抗IgM抗体・金を抗DNA抗体に結合させ、最終的に金の沈着部位で抗原のDNA分布範囲を知るという手法を使用した。電顕観察の結果、核の染色体上に多数の金粒子の沈着が認められ、免疫電顕手法は成功したと判断された。ミトコンドリア内の金粒子沈着部位すなわち核様体は直径約80-120nmの円または楕円形であった。時として、それよりも大型で直径約150nmのものも観察された。ミトコンドリア核様体は分裂直後は2個並列することが蛍光顕微鏡法で確かめられていたが、今回も希に2個並列する核様体を観察した。核様体中の金粒子の分布から核様体はDNAを含む糸状体が折りたたまってできていると推測された。また、核様体中央部にはDNAを含まないコアがあることも知ることができた。
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