研究概要 |
国立科学博物館および服部植物研究所での予備調査にもとづいて,生鮮試料収集を石鎚山,蔵王山,蒜山,香川県下等で実施し,セン類の主要な系統群を代表する材料を得た.セン類での減数分裂はおおむね年1回であり,しかも時期が限られているため得た材料のなかで目的とする観察が行えなかったものがあり,次年度に持ち越されたものがある.これまでに観察できたのは21種であり,胞子母細胞の細胞壁の形ならびに減数分裂中の細胞質のくびれがどの時期にあらわれるかという基準に従って,次の4群を認めた.すなわち,減数第一分裂前期において既に細胞質の4葉化が明かなというだけでなく,胞子母細胞の壁そのものも歪んでいるものとしてとして,Atrichum rhystophyllumとPolytrichastrum formosum,胞子母細胞の壁は歪むことなく球形を呈しているが,そのようなもののなかにも細胞質が第一分裂前期に4葉化しているものとしてMacromitrium japonicum,Herpetineuron toccoae,Brotherella henoniiがあった.また,第一分裂中期から後期にかけて4葉化が認められたものにはHyophila involuta,Venturiella sinensis,Fabronia matsumurae,lsopterygium albescens,Hypnum calcicolumがあった.さらに第一分裂終期にならないとみとめられないものとしてTetraphis pellucida,Ditrichum rhynchostegium,Oncophorus crispifolius,Weissia controversa,Grimmia pilifera,Ptychomitrium fauriei,Funaria hygrometrica,Physcomitrella californica,Rhizomnium tuomikoskii,Myuroclada maximowiczii,Homomallium japonicoadnatumなどがあった.第1の群 はスギゴゲ科であり,第2はほぼ腋生蘚類であり,第3の群は頂生セン類が集中している.一部再確認の必要があるが,おおむねこれらは系統を反映しているものであると考える.
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