研究概要 |
この研究は若い葉の分裂細胞を利用して,未研究及び殆ど研究されていない(これまで約40%が報告されている)木本植物の染色体研究を行い,欠けている高等植物の基礎デ-タを明らかにすることである。 研究代表者荻沼はこれまでの成果発表(トチュウ科・ヤマモモ科・ニレ科)に加えて,平成3年度には分担者戸部と共に,マンサク科の成果を論文発表した。 平成3年度は,関東・関西の公的機関所有の植物園(大阪市大付属植物園・農水省浅川実験林・国立科博筑波実験植物園等)に栽培されている日本産及び外国産の木本植物,特にマンサク科植物の一部とその類縁植物群の若い葉を採集し,これらの染色体の観察を行った。 論文発表したマンサク科に加えて,ブナ科6属12種,クルミ科4属6種,カバノキ科2属4種の染色体の観察を終えた。これら3科は,間期核,分裂期前期,分裂期中期の染色体の形態は互いに良く類似していることがわかった。特に,分裂期中期染色体では,動原体を中部に持つ染色体が80ー100%と高い割合で各種の染色体組中に含まれていることがわかった。クルミ科のノグルミ属(1種)ではこれまでは2n=32の染色体数が報告されていたが,今回の観察では2n=30であることが新たに伴明した。すなわち,クルミ科は従来,染色体基本数はx=8(16)とされていたが,この基本数とは相違した属が存在することが明らかとなった。 これらの植物群に加えて,クワ科,アオギリ科等の一部の種の染色体の観察も行った。
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