アメリカザリガニProcambarus clarkiiの同定ノンスパイキング介在神経であるLDS細胞の樹状突起膜性質を不連続電法・電位固定実験により調ベた。LDS細胞の樹状突起は、中心線を横切る直径10〜20μmの太いブリッジ構造とその左右にほぼ対称に分枝する細突起から成る。ブリッジ部位にガラス管微小電極を刺入し、定電流(<5nA)を注入して膜電位変化を観察すると、脱分極性電流に対して膜抵抗の減少が見られた。過分極性ステップ電流注入に対する膜応答の時定数は約20msec、脱分極性電流に対しては10msec以下であった。この整流作用はLDS細胞のシナプス統合作用に重大な影響を及ぼすと考えられる。LDS細胞に化学的単シナプス接続する感覚神経軸索束(腹部最終神経節第3根)を徐々に強く電気刺激して行くと、LDSは脱分極性の複合PSP応答に示すが、応答がある程度以上大きくなると、その回復時間が急激に短かくなる。こに性質は、膜の外向き整流作用に基づくと推定される。 外向き整流の生理機構を検討するため、単一電極による不連続膜電位固定実験を行なった。膜電位を静止電位レベルから約10mV以上脱分極固定することにより外向き電流が観察された(静止電位から50mV脱分極側まで持続時間160msecのコマンドパルスを用いて調ベた)。週分極方向への膜電位固定に対してはリーク電流のみが観察された。固定後50〜60msecで定常電流となり、その固定電位との関係はI(nA)=0.12V(mV)-0.62であった。リーク電流と固定電位との関係はI(nA)=0.08(mV)十0.05であった。この外向き電流は、10mMのTEAのかん流により約70%に減少することから、電位依存性の連延整流型K^十チャンネルによって生じると考えられる。電極刺入部位との照合により、このK^十チャンネルはLDS樹状突起膜全域にわたって存在すると推定された。今後は、遅延整流型K^十電流と共に広く見られる一過性の初期K^十(A電流)の関与の有無を調ベる必要がある。
|