平成3年度の研究はおおむね順調に経過した。発生過程でのペプシノゲンの変化をウサギ、ニホンザルで調べた。ウサギでは胎児期に特有な成分が検出された。cDNAクロ-ニングから構造が明かとなったが、従来知られているどのペプシノゲンにも属さないことから、新たにペプシノゲンFと命名した。発生過程でFから成体型成分に発現が切り替わることが明らかになった。ニホンザルではFに相当する胎児に特有な成分は見いだされなかった。成体型の成分の数はウサギ、ニホンザルとも非常に多く検出された。cDNAクロ-ニングから、各次は一次構造に違いはみられ異なる遺伝子産物であることが明かとなった。各成分の発現は発達過程で大きく異なり、一定の順序で逐次発現することが明らかになった。これはウサギ、ニホンザル共通であり成体型ペブシノゲン発現の一般的法則と考えられる。これらの成果は従来の仮説を大きく変更するものであり、動物学会、生化学会、国際霊長類学会で発表した。また一部は現在論文として取りまとめ中である。 ここまでの研究でペプシノゲンの成分の数が予想以上に多いこと、さらにそれらが発生過程で大きく変化することが判明した。このため対応する遺伝子の数も多く、その単離と同定が今後重要となろう。ウサギ、ニホンザルともに遺伝子ライブラリ-は完成したので、平成4年度内に目的の遺伝子(発生過程で変化の著しいペプシノゲンの遺伝子)が単離できるものと考えている。
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