1.イトマキヒトデにおける生殖細胞の起源について。 電子顕微鏡の観察により、生殖細胞の出現から出殖巣の分化に至る過程の詳細を明らかにした。受精4週間のブラキオラリア幼生において、生殖細胞は独立した約10個の細胞集団として存在していた。変態後の稚ヒトデでは、この細胞塊は血洞系に入り、細胞数を増しつつ反口側血洞系の分枝によって生殖巣を形成する。受精2日目の嚢胚に出現する第3体腔嚢を微細外科手術で取り除くと、ブラキオラリア幼生に出現する出殖細胞数が減少することから、生殖細胞の起源は第3体腔嚢にあると推定された。 2.ユ-レイボヤにおける卵巣および精巣の起源について。 従来全く不明であった単体ボヤにける生殖巣の出現過程を明らかにした。変態直後のユ-レイボヤを丹念に観察することにより、卵巣と精巣は、胃の噴門部附近の体腔上皮と胃壁の間の空間に存在する退化組織塊に接続した細胞集団として、別々に出現することを発見した。この細胞集団を超薄切片により電子顕微鏡的に観察した結果、これら2個の細胞集団は互いに形態的に非常に異なった細胞から構成されており、1方はERに富む細胞のみからなり、他方は生殖細胞質様の物質の存在から明らかに生殖細胞と同定できる大型細胞を含むことが判明した。両者とも細胞数を増しつつ胃壁に添って幽門部附近へ移動し、変態15日ごろ、前者は精巣の、後者は卵巣の形態をとるに至った。今後はさらに発生を遡って、変態前の幼生において生殖細胞を同定し、既に明らかなユ-レイボヤ発生時の細胞系譜と結びつけたい。
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