1.頭足類の始原生殖細胞と生殖巣形成。 ヒメイカおよびイイダコ初期胚において、電子顕微鏡により、始原生殖細胞を探索した。始原生殖細胞は、胚盤の覆い被せが終了し、胚体形成が開始する時期に、マントル原基直下に散在する大形の細胞として出現してくることが判明した。生殖細胞は、次第に集合して球体を形成するが、孵化までは、生殖巣の形態に雌雄の分化は見られない。イイダコにおいて、卵巣では、孵化直後に生殖細胞は減数分裂に入り、濾胞が出現する。精巣では、孵化後、生殖細胞の数は著しく増加するが、それが減数分裂に入るのは、孵化後数週間を経過してからである。 2.ホヤ卵巣における卵原細胞の同定。 ユーレイボヤの若い卵巣を抗原として生殖細胞を認識するモノクローナル抗体を作製した。これを用いて、従来、明らかでなかった卵原細胞を同定した。卵原細胞は、卵巣内の特定の位置に存在する初期卵母細胞の倍の直径を持つ大形細胞であった。 3.ヤムシにおける受精補助細胞の構造。 ナイカイヤムシの卵巣において、輪卵管(=貯精管)と卵形成部の間には、柱状細胞と卵柄細胞が介在している。卵柄細胞は、2個が並列に連なり、卵母細胞と輪卵管を結んでいる。この細胞内に、微小管が密に詰った直径3μmほどの管状構造が存在する。連続切片で調べたところ、これは、輪卵管壁シンシチウムが、卵柄細胞内に管状に伸び出したもので、4-5回ラセン状に巻いた後、先端は卵母細胞付近に達していることが判明した。この構造は、貯精管から卵母細胞への精子の移動に関係していると考えられる。
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