研究概要 |
本研究プロジェクトの主な目的は、昆虫の季節的多形の光周内分泌調節の際の光感受相(光周誘導相)を光スペクトラムのよって解析することであった。そこでまず、キタテハを用いて、その夏型成虫と成虫卵巣休眠の発現を指標とした光周感受期の特定が試みられた。その結果、キタテハの2つの異る季節的多形の誘導のための光周感受期が、重複してはいるがそれぞれ異る発生のステ-ジをカバ-している(2令初めから5令終りまで、および2令初めから蛹の終りまで)を突き止めた。また同時に、キタテハ幼虫を8Lー4D下で飼育すると,光周計時の際に重要な役割を果しているとされる概日時計が、8Lー4Dの明暗周期(12時間周期)に合った時を刻むことが明らかとなったが、光周計時の際の概日時計の回転数と積算長日経験日数との間に明確な関係が認められないことが明らかとなった。この知見は、概日時計の回転数と長日または短日の経験日数との間に明確な関係がないことを示す初めてのものであり、今後の研究の発展が期待される。 また、アゲハチョウでは、休眠蛹が誘導される8Lー16D下で幼虫を飼育し、その暗期に波長域の狭い光パルスを与え、非休眠蛹を誘導する実験を試みた。その結果、580ー680nmの波長域の光パルスでは、非休眠蛹はほとんど誘導されないが、480nm付近の波長の光パルスでは、かなりの高率で非休眠蛹が誘導されることを突きとめた。 アゲハチョウを用いた、今回の光同誘導蛹の光スペクトラム解析の研究はまだ始まったばかりであり、まとまった成果をあげるには至っていない。しかし、今回の結果は、今後研究を続ければ、これまでにはない重要な知見を、昆虫の光周誘導相の研究にもたらすものであることが確実となった。
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