1.鳥類と哺乳類においては、遺伝的な性の決定に従って生殖腺の表現型が卵巣または精巣に分化する。この両現象の間を結ぶ制御機構についての知見を得るため、実験的に性転換が容易で、雄が異型性染色体を有し、卵巣の機能発現が早く、性殖腺の左右差が顕著な鳥類(ニワトリ、ウズラ、アヒル)を用いた。対照動物として、雄が異型性染色体を有し、精巣の機能発現が早い哺乳類(ラット、マウス)を用いた。 2.鳥胚の正常発生過程を追って、経齢的な生殖腺の形態変化、エストロゲンとアンドロゲン産生の変動、芳香環化酵素(アロマターゼ)活性の消長を、遺伝的性別及び左右別に調ベた。 3.正常発生過程を追って、生殖腺が産生するペプチド系生理活性物質、特に細胞成長因子(TGF-β、IGF-1、EGF、インヒビン)の発現と消長を免疫細胞化学的に検索した。 4.実験的性転換を行って、性転換の経過、左右生殖腺の反応の差異、生殖細胞に及ぼす生殖腺体細胞の影響を、形態的、機能的に、正常発生過程と比較した。実験的性転換の方法は、(1) 遺伝的雄生殖腺の卵巣化は、孵卵3日目の遺伝的雄卵への合成エストロゲン投与または胚卵巣移植により、(2) 遺伝的雌生殖腺の精巣化は、遺伝的雌卵への胚精巣移植、抗エストロゲン物質投与、アロマターゼ阻害物質(ステロイド系、非ステロイド系)投与によった。 5.生殖腺を胚体外に取り出して器官培養し、卵巣と精巣との並置培養や、培地への性転換誘導物質の添加により生じる外植体の形態的、機能的変化と、外植時の胚齢との関係を調ベている。 6.ニワトリ及びウズラの精巣からミユラー管抑制物質を精製し、抗体を作製している。
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