これまでの研究で、ウズラでは繁殖期の終了時にみられる黄体形成ホルモン(LH)の分泌低下がおこるためには、日の長さが短くなることに加えて外気温の低下が必要であることが明らかになった。さらに、短日+低温処理により、血中LH濃度が非繁殖期のレベルにまで低下するのにともない、トリヨ-ドサイロニン(T3)の濃度は初めの濃度の4、5倍にも上昇した。チロキシン(T4)の濃度の変化は短日のみの場合と同じであった。 1.LH濃度の低下は処理後すぐに始まるが、T3の増加が有意になるには処理後6日後である。そこで、この点をさらに確かめるために、(1)長日19C、(2)長日→短日(12L12D)19C群、(3)長日→短日12時間19C12時間9C群をつくり、2時間おきに2日間25回採血し、血中T4、T3濃度を測定した。その結果は次のようであった。長日16L8Dのもとで、T4、T3ともに暗期に高く明期に低い日周性が認められた。短日にすると夜間のピ-クが前へずれる傾向が認められた。短日+低温では日周性が不明瞭になり、とくにT3では低温にさらした次の日の明期の濃度が全般的に高くなった。この高くなった濃度が維持されてゆくと考えられる。 2.気温の低下によりT3濃度が上昇し、これがLHを下げるという作業仮設を立証するために長日→短日処理とT4、T3投与を組み合せた実験をおこなった。投与法は両ホルモンをそれぞれサイラスティック糊と混ぜてシ-ト状に延ばし、決まった大きさに切り、これを皮下に植えた。ホルモンと糊を1:4に混ぜた厚さ1mm、5mm四方のシ-トを1枚、短日ウズラに植えたが、短日のみの対照群との差は顕著ではなかった。2枚に増やしたところ、T3シ-トで有意なLH分泌の抑制が認められた。T4では効果はなかった。また、2週間後に植え込んだT3シ-トを除去したが、LH濃度は低いままであった。
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