1.5月に洞海湾で潜水調査を行ない、約15点のホヤ類標本を得ることができた。さらに熱帯系の内湾性普通種であるウスイタボヤBotryllus schlosseri、イタボヤBotrylloides violaceus、シモダイタボヤ(仮称)Botrylloides simodensis、ミナミシモフリボヤAplidium multiplicatumなどの良好な水中生態写真を初めて入手できた。これらの種では成熟してないと正確な同定が不可能であるが、今回幸いにもそのような状態の群体について写真がうまく撮れたのである。 2.1991年秋以降に洞海湾で発見された日本新記録と思われるPolyandrocarpa sp.は、残念ながら5月の調査では発見できなかったが、その後の研究により大西洋に広く分布するP.zorritensisと酷似することがわかった。おそらく日本に最近進入してきたものと思われる。この事実を簡単に報告すべく、現在論文を準備中である。 3.7月に沖縄県慶良間諸島で実施したフィールドワークの結果、約350コマの水中生態写真とともに約160点のホヤ類標本を入手した。これらと前年に八重山諸島等で採集した標本とをあわせて行って来た分類学的研究の成果を、今年初めてわかったことを中心に以下に述べる。 (1)属として日本新記録のArchidistomaの1種が慶良間諸島の潮下帯に比較的多産する。現在までの不献調査の結果ではこれに該当する外国産種はないので、新種の可能性が高い。 (2)沖縄海域の普通種であるミナミクロボヤ(仮称)Polycarpa sp.(cf.crypotocarpa)、モモイロボヤ(仮称)Polycarpa sp.(cf.maculata)、およびフイリクラベラ(仮称)Clavelina sp.について、正確な同定を期して文献および外国博物館所蔵標本の調査を行っている。
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