ヌタウナギC3に対するウサギ抗血清(抗C3-1抗血清)をプローブとして、ヌタウナギC3-1と抗原性を共有する分子(C3-2)を精製した。得られた分子の性状を、ヌタウナギの主要なC3分子であるC3-1と多面的に比較・検討し、その位置づけを試みた。単離されたC3-2はC3-1と大部分の抗原性を共有する分子量約165KDaの血清蛋白質であった。この分子は分子量約77KDa、72KDaおよび30KDaの3つのサブユニットで構成された、α_2-グロブリン分画に電気泳動的易動度を持つ分子であった。また、単離されたC3-2のアミノ酸組成は、C3-1のそれに酷似していた。ところが、各精製段階におけるC3-2の分子構造を抗C3-1抗血清を併用して検討したところ、インタクトなC3-2分子は、β分画に電気泳動的易動度を持ち、110KDaおよび72KDaサブユニットからなる2本鎖構造を示した。さらに精製過程の後期に、110KDaサブユニット内でポリペプチド鎖の切断が起こり、3本鎖構造に変換することが示された。 次に、C3-1とC3-2との一部抗原性の違いに注目し、C3の2型にそれぞれ特異的で交差反応しない特異的抗血清の作製を試みた。この過程で、C3-1特異的抗血清の調整に成功した。抗C3-1特異的抗血清を用いたロケット免疫電気泳動法により、C3の血中濃度を個体別に定量した。その結果、血漿中濃度(0.92±0.29mg/ml)には著差が認められ、特に注目すべきことには、13個体中1個体でC3-1の欠損が明らかとなった。さらに吸収前後の抗C3-1抗血清と個体別血漿とから調整した免疫沈降物を電気泳動的に調べ、サブユニットの分子量の違いを指標にして、C3-1およびC3-2の個体別存在様式を検索した。その結果、C3-2はC3-1のアイソタイプである可能性が示唆された。
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