研究概要 |
尾部神経分泌系(CNS)の生理的作用は未だ明らかではない。CNSホルモンであるウロテンシンIとII(UI,UII)は、いずれも視床下部神経分泌系ホルモンと著しい構造上の類似性を持つ。本研究は、両ホルモンの向下垂体作用の可能性を考慮し、これまでなされてきた研究とは異なる新たな視点から、かつ分子生物学的手法を取り入れ、CNSの生理的作用の解明を目指したものである。 1.UIとUIIを化学的に合成し、我々が既に作成したそれぞれに対する抗血清を用い、ラジオイムノアッセイ(RIA)を確立した。これにより、血中や種々の組織における両ホルモン量の測定が可能となった。 2.UIとUIIに対する^<35>Sで標識したRNAプローブを用いたin situ hybridization(ISH)により、両ホルモンは、ほとんど全ての尾部神経分泌細胞で同時に発現されることを明らかにした。さらに、UIの免疫組織化学とISHを同一切片で行い、UI mRNAとUIペプチドを同一神経分泌細胞内で検出する方法を確立した。これにより、遺伝子発現およびホルモンの合成と分泌の動的状態を捉えることが可能になった。一方、非放射性RNAプローブを用いたISHも確立した。本法は、解像力の高さや迅速性の点で、放射性プローブを用いたISHよりもはるかに優れている。 3.UIは副腎皮質刺激ホルモン放出因子(CRF)と構造上の著しい類似性を持つため、それぞれに特異的な合成プローブを作製し、両者は視床下部の別々の核に存在することを明らかにし、UIが向下垂体作用を持つことを強く示唆した。 4.現在、ISHおよびRIAを駆使し、正常および下垂体摘出魚を用い、種々の生理的状態におけるUIとUIIの遺伝子発現および両ホルモンの動態を調ベ、CNSの生理的作用の解明を急いでいるところである。
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