アイソザイム多型とミトコンドリアDNA(mtDNA)の制限酵素断片多型からメダカ類の系統解析を行ってきた結果、メダカの種内には、著しく大きな遣伝的変異が存在することが明らかになった。これらの変異の分布や変異間の塩基配列の違いを詳しく調ベることによって、メダカ野生集団のさらに詳しい構造解析や地域集団の形成過程の推定が可能になると考え本研究を開始した。 昨年度にひき続きmtDNAの塩基配列レベルの解析の基礎として、8種の制限酵素の切片多型を指標とした日本産野生メダカ集団の詳しい解析を行った。その結果、北日本集団から10の、南日本集団から89のハプロタイプが検出され、地域特異的なハプロタイプの分布も認められた。さらに、南北集団のハプロタイプ間の塩基配列の違いは約10.1%と推定された。 本年度は北日本集団型のハプロタイプ(1)と南日本集団型(32)の全mtDNAのクローニングも行い、これらを用いて12srDNA、D-100p、cyt.b、ND4領域のシークエンジングを開始した。まだ解析途中だが、これら2つのハプロタイプ間のホモロジーは、12srDNAで96.1%(563/586)、cyt.bで88.4%(490/554)、ND4で90.1%(201/223)となり、領域によって値は異なるものの、約10%という制限酵素切断型の差異をもとにした推定値が概ね妥当であることが示された。 今後は3〜4kbの塩基配列の決定を行った後、その結果をもとに野生集団解析のためのPCRプライマーの作成を行い、PCRとダイレクトシークエンス法によるハプロタイプ間の系統関係、分岐年代の推定などを行っていく予定である。
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