前年度から持ち越した課題である珪藻質堆積物からの砕屑粒子の分離抽出法は、今年度やっと確立した。その詳細は、成果報告書に記載する。この抽出法を用いて、青森県鰺ケ沢地域の上部中新統から下部鮮新統の珪藻質泥岩中の生物源シリカ及び砕屑粒子を分離し、生物源シリカの量、砕屑粒子の粒度、鉱物、化学組成を詳しく調べ、以下の様な結果を得た。(1)生物源シリカの含有量は、周期的変動傾向を示し、その周期は3〜5Maでは約4万年であるのに5Ma以前では10万年周期が卓越する。(2)生物源シリカ含有量の変化と連動して砕屑粒子の粒度、鉱物、化学組成にも周期的な変化が認められる。(3)生物源シリカ含有量と砕屑粒子組成の変動の位相関係も5Maを境に逆転する。 砕屑粒子の粒度や鉱物、化学組成は、風化作用を通じて陸上の気候を反映していると考えられる。一方、生物源シリカの量や組成は、海洋環境、特に日本海の場合は海洋循環を反映していると考えられる。これらの変動周期や位相関係が5Maを境に変化した事が、日本周辺にのみ認められる局地的現象なのか、それとも汎世界的な現象なのかは、今後更に検討を要する問題である。しかし、1〜5Maにかけては、海洋の酸素同位体比が4万年周期で変動し、一方、14〜15Maにかけては10万年周期が認められる事を考えると、汎世界的な現象である可能性が高い。 本年度はまた、ODP797地点の第四紀試料170個について、化学組成の分析を行った。その結果、この地点の第四紀堆積物中の砕屑粒子の0〜50%が黄砂起源の粒子であると考えられ、黄砂起源粒子の貴与は氷期に高く、間氷期に低い事が明らかになった。予察的結果によれば、黄砂起源粒子の流入は、約2.5Ma以降顕著になっている。
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