東北日本弧の海溝側に分布する中期中新世(16〜13Ma)火山岩の岩石記載と全岩化学組成の検討から、各地の火山岩は以下の特徴をもつことが明らかになった。最も北部の下北半島泊地域の火山岩は、玄武岩と安山岩からなる。玄武岩は主に単斜輝石カンラン石玄武岩からなり、MgOに著しく富む(最高で11.7%)ことで特徴づけられる。安山岩は主に両輝石安山岩であり、カルクアルカリ系列に属する。北上市東方の稲瀬火山岩類は、安山岩を主体とし、これらは北部の下部層と南部の上部層に二分される。両安山岩ともソレアイト系列に層するが、北部の安山岩の中には、海溝側のものとしてはHFS元素(TiO_2、P_2O_5、Zr、Nbなど)に越駅東方一帯に分布する石越安山岩は、安山岩とデイサイトからなるが、デイサイトはソレアイト系列のものとカルクアルカリ系列のものとがある。篦岳安山岩は、東北本線子午田駅の東方に分布するもので、両輝石安山岩を主体としている。これらはソレアイト系列のものである。いわき西方に分布する石森山安山岩は、両輝石安山岩を主体とするが、カンラン石両輝石玄武岩や角閃石斑晶を含むデイサイトを伴う。これらの安山岩とデイサイトの多くはカルクアルカリ系列に属する。以上の海溝側火山岩とほぼ同時期に活動したとみられる、脊梁帯および背弧側の火山岩との間のインコンパティブル元素量を同じSiO_2量で比較した。その結果、SiO_2が53%以下の玄武岩類では、海溝側の玄武岩類には脊梁帯と背弧側の玄武岩類よりも、明らかに高いK_2O量Rb量を有しているものが多く存在することが明らかとなった。すなわち、これらの玄武岩類においては、東北日本弧の第四紀の玄武岩にみられる島弧横断方向でのK_2OやRbの変化の傾向とは明瞭に異なっていることが示された。
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