研究概要 |
本研究要約 1)東北日本弧の海溝側に分布する霊山玄武岩類、稲瀬火山岩類、泊火山岩類のK-Ar年代を測定し、それぞれから、15.1〜15.4Ma、12.6〜16.0Ma、13〜15Maの形成年代がえられた。 2)これを既存の年代のデータを検討した結果、13〜16Maの火山フロントが第四紀火山フロントの30〜50Km東側に存在することがあきらかとなった。 3)東北日本弧の海溝側の第四紀火山帯は、火山岩の苦鉄質斑晶の組合せの違いとK_2Oなどのインコンパティブル元素量の違いから、青麻-恐火山列と脊梁火山列に細分されているが、13〜16Maの海溝側の火山岩を、このように2列に分けることはできない。 4)青麻-恐火山列と脊梁火山列の火山岩は、結晶分化の進んだものが多いが、13〜16Maの火山岩のなかには、MgO,Ni,Crなどに著しくとみ、FeO/MgO比の低い、未分化な玄武岩が含まれる。このような未分化な玄武岩は、海溝側に産する後期中新世移行(0〜8Ma)の火山岩には全くみられない。 5)13〜16Maの海溝側火山岩間には、東北日本弧の第四紀火山岩が有するK_2Oの変化幅にほぼ相当するK_2Oの違いが存在する。 6)背弧側に分布する13〜16Maの玄武岩と安山岩は、海溝側の低K_2Oに玄武岩や安山岩と同程度かあるいはこれよりも低いK_2O量を有している。このように、東北日本弧の13〜16Maの火山岩にみられるK_2Oの島弧横断方向の変化の様相は、第四紀火山岩のK_2Oの変化傾向とは明らかに異なる。 7)13〜16Maの火山岩のなかにはTiO_2や他のHFS元素にとむソレアイト質の玄武岩と安山岩、FeO/MgO比の高いアイスランダイト様の珪長質な安山岩やデイサイトなどがみられる。この種の火山岩は、東北日本弧の第四紀火山岩のなかにはみいだすことはできない。このような東北日本弧の海溝側に分布する13〜16Maと第四紀の火山岩の違いをもたらした主な要因は、マグマの発生機構にかかわるテクトニックな条件が2つの時代で異なっていることによるであろう。
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