研究概要 |
本研究の目的は,コンピュータシステムを介して,さまざまな熱史評価法がインタラクティブ関連し,それぞれの長所を生かした新しい熱流量史評価補正法を確立することにある. 前年度は,熱流量史を評価補正するための温度指標を確立するため,さまざまな温度指標の中で,特に有効な指標と考えられるビトリナイト反射率,ステラン異性体組成,メチルフェナントレン指標に注目し検討を進めた.その結果,これらの有機物温度指標の実際的有効を明らかにした. 最終年度はこれらの温度指標と堆積盆地のタイプに基づいた熱流量史評価補正法について考察するため,ブルガリア,黒海西部堆積盆地を例として,実際的な検討を行った.同地域の抗井試料について,科学研究費により設備備品として購入したガスクロマトグラフにより,堆積岩中の有機物の分析を行った.同地域の熱流量変化についての地球物理学的考察を行っている文献を調査し,同地域では中生代以降熱流量が減少(冷却)しているものと仮定することができた.このような大局的な熱流量の変化と求められたステラン異性体組成,ビトリナイト反射率などの有機物温度指標に基づいて詳細な熱流量史の評価を試みた.これまでにない新しいアプローチよって,石油資源探査に際してより実際的な熱流量史を提案することができた.最終年度の研究によって,当初の目的であった新しい熱流量史評価補正法について総括することができた.しかしながら,著しい不整合によって堆積物試料が欠如している場合には,有機物温度指標を分析することができないため,この方法には限界のあることもあらためて確認できた.
|